「問い合わせが来るたびに、同じ説明を繰り返し、その場しのぎのメモをSlackで送るだけ…」 「ちゃんとマニュアルを作ろうと思っても、日々の障害対応やPCキッティングに追われて、気づけば後回しになっている」
社内SEのマニュアル作成効率化を考えるとき、こういう状況に心当たりはないでしょうか。
- Slackで送ったメモがどのチャンネルに埋もれたか分からなくなっている
- 半年前に自分が作ったマニュアルが今も使われているか誰も把握していない
- 「このマニュアル、古くないですか?」と言われて初めて更新漏れに気づく
自分も最初はまったく同じでした。マニュアル作成が苦手で、毎回フォーマットから悩み、結局「分かりにくい」と言われて作り直しの繰り返し。この負のループを断ち切る鍵が、AIとテンプレートの活用です。
この記事では、マニュアル作成にかかる時間を70%以上削減し、かつ品質も向上させる具体的な手法を解説します。
社内SEがマニュアル作成で直面する課題
結論から言うと、マニュアル作成の課題は以下の4つに集約されます。
- 課題1:時間がかかりすぎる
スクリーンショットの撮影、画像の加工、文章作成…ゼロから作ると1つのマニュアルに半日以上かかることも珍しくありません。
- 課題2:フォーマットがバラバラ
担当者ごとに作り方が異なり、品質にムラが出ます。結果として、利用者が必要な情報を見つけにくくなります。
- 課題3:更新が追いつかない
システムの仕様変更やアップデートのたびに、全てのマニュアルを修正するのは現実的ではありません。古い情報が放置されがちです。
- 課題4:どこにあるか分からない
ファイルサーバーの奥深くに保存され、検索しても見つからない「秘伝のタレ」状態になりがちです。
これらの課題を放置すると、問い合わせ対応に追われ続け、本来やるべきコア業務に集中できなくなります。
実際にあった話として、マニュアルをファイルサーバーで管理していた結果、最新版がどれか分からなくなり、古い手順書をもとに設定した従業員からの問い合わせが急増したというケースをよく聞きます。「v3_最終版_修正済み.xlsx」が5つ並んでいるような状態です。自分の経験上、この「バージョン地獄」は放置するほど収拾がつかなくなります。
AIを活用したマニュアル作成の基礎知識と実践例
AI、特にChatGPTのような生成AIを使えば「ゼロから書く」手間が大幅になくなります。構成案の作成から文章の生成まで、面倒な作業のほとんどを任せることが可能です。
AI(ChatGPTなど)による文章生成・構成案作成
マニュアルの骨子となる構成案をAIに作ってもらうところから始めてみてください。これが思考の土台となり、作業時間を大幅に短縮できます。
【実務での使い方】 ChatGPTに以下のプロンプトを入力するだけで、精度の高い構成案が数秒で完成します。
▼そのまま使えるプロンプトテンプレート
あなたは企業の社内SEです。
以下のテーマで、ITに詳しくない従業員向けの業務マニュアルの構成案を作成してください。
新入社員向けPC初期設定マニュアル
- PCの開梱と接続
- 電源投入とWindows初期設定
- 社内Wi-Fiへの接続方法
- 指定ソフトウェアのインストール手順
- セキュリティソフトの初期設定
- 困ったときの問い合わせ先
- 章立て(例:1. はじめに, 2. PCのセットアップ)
- 各章に含めるべき内容を箇条書きで記述
自分が試した限りでは、このプロンプトだけで構成案の作成にかかる時間が30分から5分以下に縮まりました。あとは肉付けするだけなので、「何を書けばいいか分からない」という状態にならなくなります。
関連記事:ChatGPTで業務効率化する方法|社内SEがすぐ使える具体例5選
既存マニュアルの要約・更新提案をAIに任せる
古いマニュアルや、他の人が作ったドキュメントの更新もAIの得意分野です。全文を読み込ませ、要約や改善点を提案してもらうことで、レビュー時間を短縮できます。
【実務での使い方】 既存マニュアルのテキストをコピーし、以下のプロンプトと共にChatGPTに貼り付けます。
▼そのまま使えるプロンプトテンプレート
以下のマニュアルを分析し、改善点を提案してください。
対象読者はITに詳しくない従業員です。専門用語を避け、より分かりやすい表現に修正してください。
また、全体の要点を3つの箇条書きでまとめてください。
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(ここに既存マニュアルのテキストを貼り付け)
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⚠️ よくある落とし穴:機密情報や個人情報を含むマニュアルを、そのままパブリックなAIサービスに入力するのは絶対に避けてください。情報漏洩のリスクがあります。必ず事前にマスキングするか、セキュリティが担保された法人向けAIサービスを利用しましょう。
関連記事:社内SE向けAI利用ガイドライン|情報漏洩を防ぐ実務ルールとテンプレート
テンプレート活用でマニュアル作成を標準化・高速化する
AIで文章を作成したら、次はテンプレートで体裁を整えます。テンプレートを使う目的は、品質の標準化と作成の高速化です。目安として、テンプレートを整備するだけでマニュアル作成時間が平均50%以上削減できます。
Google Workspace(Docs/Slides)でのテンプレート共有と運用
Google ドキュメントやスライドのテンプレート機能を使えば、誰でも統一されたフォーマットでマニュアルを作成できます。
【実務での手順】
- ベース作成:Google ドキュメントでマニュアルの雛形を作成します(ヘッダーに会社ロゴ、フッターに改訂履歴、見出しスタイルなどを設定)
- テンプレート登録:完成したドキュメントを組織のテンプレートギャラリーに登録します
- 利用:従業員は Google ドキュメントの「新規作成」画面からテンプレートを選択するだけで、すぐに書き始めることができます

▼シンプルなマニュアルテンプレート構成例
- タイトル:何のマニュアルか一目で分かるように
- 目的:このマニュアルで何ができるようになるか
- 対象者:想定する読者(例:全従業員、営業部など)
- 前提条件:必要なツールやアカウントなど
- 手順:スクリーンショットを交えて具体的に解説
- FAQ:よくある質問と回答
- 改訂履歴:いつ、誰が、どこを更新したか
定型業務マニュアルの自動生成フロー構築(GAS等)
「アカウント発行依頼」など、定型的な依頼に応じて作成するマニュアルは、フローの自動化が有効です。
【自動化の仕組み(例)】
- 依頼受付:Google フォームで必要な情報(氏名、部署、希望する権限など)を受け付けます
- データ転記:Google Apps Script(GAS)を使い、フォームの回答を Google ドキュメントのテンプレートに自動で転記します
- マニュアル雛形生成:申請者専用の作業マニュアル(の雛形)が自動で生成され、指定フォルダに保存されます
以下は、Google フォームの回答を Google ドキュメントに自動転記するGASのサンプルコードです。
// Googleフォームの送信をトリガーに実行される関数
function createManualFromTemplate(e) {
// フォームの回答を取得
var responses = e.values;
var applicantName = responses[1]; // 申請者名
var department = responses[2]; // 部署名
var permission = responses[3]; // 希望権限
// テンプレートのドキュメントIDを指定(事前にテンプレートを作成しておく)
var templateId = 'ここにテンプレートのドキュメントIDを入力';
// 保存先フォルダのIDを指定
var folderId = 'ここに保存先フォルダのIDを入力';
// テンプレートをコピーして新しいドキュメントを作成
var templateFile = DriveApp.getFileById(templateId);
var newFile = templateFile.makeCopy(applicantName + '_アカウント発行手順', DriveApp.getFolderById(folderId));
// 新しいドキュメントを開いてプレースホルダーを置換
var doc = DocumentApp.openById(newFile.getId());
var body = doc.getBody();
body.replaceText('{{申請者名}}', applicantName);
body.replaceText('{{部署}}', department);
body.replaceText('{{権限}}', permission);
// ドキュメントを保存して閉じる
doc.saveAndClose();
// 完了をログに出力
Logger.log('マニュアル作成完了:' + newFile.getUrl());
}
⚠️ テンプレートドキュメント内の置換文字列(
{{申請者名}}など)は、フォームの設問内容に合わせて変更してください。また、トリガーはGASの「トリガー設定」画面から「フォーム送信時」に設定する必要があります。
この仕組みはPower Automateでも構築可能です。自動化によって、都度発生していたコピー&ペースト作業がゼロになります。
関連記事:VBAとPower Automateの違い|社内SEはどちらを使うべきか【結論あり】
マニュアルの保管・運用を効率化するツールとポイント
マニュアルは「作って終わり」ではなく「使われてこそ」価値があります。そのためには、保管と運用の仕組みが不可欠です。
NotionやConfluenceを活用したナレッジベース構築
ファイルサーバーでのマニュアル管理は、検索性の低さから限界があります。NotionやConfluenceのようなナレッジベースツールへの移行をおすすめします。
| ツール | 特徴 | 料金(目安) |
|---|---|---|
| Notion | 柔軟性が高く、DB機能が強力。ページ間の連携が容易。 | フリープランあり。チーム向けは¥2,000/ユーザー/月〜 |
| Confluence | ITプロジェクト管理に強い。Jiraとの連携がスムーズ。 | フリープラン(10ユーザーまで)。Standardは¥744/ユーザー/月〜 |
これらのツールを導入することで、以下のメリットがあります。
- 強力な全文検索機能
- 階層構造で情報を整理しやすい
- 複数人での同時編集が可能
- コメント機能でフィードバックが容易
定期的な見直しと更新を自動化する仕組み
マニュアルの陳腐化を防ぐため、定期的な見直しを自動リマインダーで仕組み化しましょう。
【実務での使い方(Power Automate利用)】
- トリガー設定:「スケジュール済みクラウドフロー」を選択し、「毎月第1月曜日」のように設定します
- アクション設定:Teamsコネクタを使い、マニュアルのオーナー(担当者)宛に「〇〇マニュアルの更新確認をお願いします」というメッセージを自動投稿させます
⚠️ よくある落とし穴:自動通知を設定しても、マニュアルの「オーナー(責任者)」が決まっていないと形骸化します。必ず各マニュアルにオーナーを割り当て、責任の所在を明確にしてください。
実際に使ってみた結果
- かかった時間: テンプレート整備とGAS設定で初回約3時間。2回目以降は1マニュアルあたり30〜40分で完成できるようになりました
- 削減できた時間: 1件あたり2〜3時間かかっていた作業が40分前後に。月10件対応していた場合、月あたり約20時間の削減になります(環境によって異なります)
- 詰まったポイント: GASのトリガー設定でハマりました。「フォーム送信時」のトリガーはスクリプトエディタではなく、専用の「トリガー設定画面」から登録する必要があります
- 正直な感想: 最初は「テンプレートを作るのも手間では?」と思っていましたが、1本整備してしまえば2本目以降が劇的に楽になりました。特にAIとの組み合わせは想像以上に効果的でした
結論(社内SEならこう使う)
AIで構成案を作り、テンプレートに流し込み、GASで雛形生成を自動化する。この3ステップを整えるだけで、社内SEのマニュアル作成業務はルーティン作業に変わります。まず問い合わせが最も多い1本のマニュアルでテンプレート化を試してみてください。
【Q&A】社内SEが知っておくべきマニュアル作成の注意点
マニュアル作成でよくある質問にお答えします。
Q1. 動画マニュアルとテキストマニュアル、どちらが良いですか?
A1. 結論、両方の使い分けが最も効果的です。
- 動画向き:実際の画面操作の流れを見せたい場合(例:ソフトウェアのインストール手順)
- テキスト向き:設定値やチェックリストなど、コピー&ペーストが必要な情報を含む場合
Q2. マニュアルが読まれないのですが、どうすれば良いですか?
A2. 以下の3つのポイントを見直してみてください。
- タイトルを具体的にする:「×システムの使い方 → 〇経費精算システムで交通費を申請する方法」
- 結論を最初に書く:冒頭で「このマニュアルを読めば何ができるか」を明記します
- FAQから逆引きできるようにする:よくある問い合わせ内容を見出しにして、解決策に直接たどり着けるようにします
⚠️ よくある落とし穴:最初から100点満点の完璧なマニュアルを目指さないことです。まずは60点の完成度で公開し、利用者からのフィードバックをもとに改善していくサイクルを回す方が、結果的に質の高いマニュアルになります。
社内SEマニュアル作成効率化の取り組みは、一度仕組みを作ってしまえば後はほぼ自動で回ります。「面倒な作業」と感じているうちは損をしていると思ってください。AIとテンプレートを組み合わせた仕組みは、作った分だけ確実に返ってきます。
関連記事:社内SEが自動化すべき業務10選|現場で使える具体例と実装手順
関連記事:【実践編】社内SE専用AIアシスタントの作り方|GPTsでマニュアル検索を効率化する

