IT資産管理台帳の自動更新、ついつい後回しになっていませんか。
こういう状況、思い当たりませんか?
- 新入社員のPC準備や退職者のアカウント削除に追われて、台帳への反映をすっかり忘れていた
- 年に一度の資産棚卸しで台帳と現物の数が合わず、原因調査だけで丸一日潰れた
- Excelの管理台帳が担当者ごとに複数存在していて、どれが最新版か誰も分からない
こうした状態が続いているなら、すでに手動管理は限界に近いです。
結論から言うと、Intune・Power Automate・SharePointリストを連携させることで、IT資産管理台帳の自動更新を実現できます。 一度フローを組んでしまえば、あとは毎日自動で台帳が更新され続けます。
この記事では、手動更新から脱却して常に最新の状態を保つIT資産管理台帳を構築するための具体的な手順を、社内SEの目線で解説します。
なぜIT資産管理台帳はExcelからSharePointリストに移行すべきなのか?
リアルタイム性・同時編集性・自動化との連携しやすさにおいて、SharePointリストがExcelより圧倒的に優れているからです。
Excel台帳が抱える手動更新・属人化の問題点
多くの企業で使われているExcelの管理台帳には、以下のような課題があります。
- 手動更新によるミス:担当者が手入力するため、入力ミスや更新漏れが発生しやすいです。
- 同時編集ができない:誰かがファイルを開いているとロックされ、他の人は編集できず待ち時間が発生します。
- バージョンの乱立:「○○更新版」「最終版_2024xxxx」のようなファイルが散在し、どれが正本か分からなくなります。
- 属人化:ファイルの保管場所や更新ルールが特定の担当者に依存しがちです。
実際にあった話として、アカウント管理をExcelで行っていた結果、退職者のデバイスが台帳から削除されないまま残り続け、Intuneのライセンスを無駄に消費していたケースがあります。「台帳には載っていないから存在しないはず」という思い込みが、インシデント発生時の初動調査を大幅に遅らせることにもつながります。あなたの職場でも、似たような状況はありませんか?
これらの問題は、IT資産の正確な把握を妨げ、セキュリティリスクにも直結します。
SharePointリストで実現するリアルタイムな情報共有と同時編集
一方、SharePointリストを台帳として利用すると、これらの問題点をまとめて解消できます。
- 常に最新情報を共有:クラウド上で一元管理されるため、全員が常に同じ最新データにアクセスできます。
- 複数人での同時編集が可能:ファイルロックの概念がなく、複数人で同時に情報を更新できます。
- 自動化ツールとの親和性:Power AutomateなどのMicrosoft 365サービスと簡単に連携でき、情報の自動更新や通知が実現します。
- 変更履歴の自動保存:誰がいつどこを変更したか、バージョン履歴が自動で記録されるため、追跡が容易です。
IT資産管理の基盤として、まずExcelからSharePointリストへ移行することを強くおすすめします。
IT資産管理台帳 自動更新の全体像:Intune・Power Automate・SharePointの連携
この自動化の仕組みは、Intuneがデバイス情報を収集し、Power Automateがその情報を定期的にSharePointリストへ書き込む、というシンプルな構成です。
各ツールの役割は以下の通りです。
Intune(MDM)でデバイス情報を自動収集
Intuneは、PCやスマートフォンなどのデバイスを管理するMDM(モバイルデバイス管理)ツールです。組織内のデバイスがIntuneに登録されると、以下の情報が自動で収集・管理されます。
- デバイス名、シリアル番号
- OSのバージョン
- ストレージ容量、メモリサイズ
- コンプライアンスの状態
- プライマリユーザー情報
これらがIT資産管理に必要な基本データになります。
関連記事:Microsoft Intuneを実際に使ってみた|社内SE目線でのデバイス管理と評価
Power Automateで定期的に情報を取得・更新
Power Automateは、さまざまなアプリケーションやサービスを連携させ、定型業務を自動化するクラウドサービスです。
今回の仕組みでは、以下の役割を担います。
- トリガー:スケジュールを設定し、毎日深夜など定期的にフローを自動実行します。
- 処理:Microsoft Graph APIを介してIntuneから全デバイスの最新情報を取得します。
- アウトプット:取得した情報をSharePointリストに書き込み、台帳を更新します。
人の手を介さずに台帳を常に最新の状態に保つ、この仕組みの心臓部です。
SharePointリストを最新のIT資産管理台帳として利用
SharePointリストは、自動更新された情報が集約される「マスター台帳」の役割を果たします。
- 常に最新のデバイス情報が一覧で確認できます。
- ビューをカスタマイズして、OSごとの一覧や未割り当てPCの一覧などを簡単に作成できます。
- Power BIと連携して資産状況を可視化したり、Teamsに通知を飛ばしたりと、さらなる活用も可能です。
【実践】Power AutomateでIntuneのデバイス情報を自動取得するフロー作成手順
SharePointリストの準備・APIのアクセス許可設定・Power Automateのフロー作成という3つのステップで、IT資産管理台帳の自動更新を実現します。
準備①:台帳となるSharePointリストの作成
まず、Intuneから取得した情報を格納するSharePointリストを作成します。
- 任意のSharePointサイトにアクセスし、「新規」から「リスト」を選択します。
- 「空白のリスト」を選び、リスト名(例:IT資産管理台帳)を入力して作成します。
- Intuneから取得したい情報に合わせて、「列の追加」から必要な列を作成します。
最低限用意しておきたい列の例:
| 列名 | 列の種類 | 備考 |
|---|---|---|
| デバイス名 | 1行テキスト | |
| シリアル番号 | 1行テキスト | 差分更新のキーとして利用 |
| 利用者 | 1行テキスト | |
| OS | 1行テキスト | |
| 製造元 | 1行テキスト | |
| モデル | 1行テキスト | |
| 最終同期日時 | 日付と時刻 |
準備②:Microsoft Graph APIのアクセス許可設定
Power AutomateからIntuneの情報を取得するには、Microsoft Graph APIへのアクセス許可が必要です。
Microsoft Entra ID(旧Azure AD)で「アプリの登録」を行い、対象のアプリに対してAPIのアクセス許可を付与することで設定します。
- 必要なアクセス許可:
DeviceManagementManagedDevices.Read.All - 種類:アプリケーションの許可
- 注意:この設定には管理者権限が必要です。セキュリティ担当者と連携して進めてください。
この設定により、Power AutomateがIntuneのデバイス情報を安全に読み取れるようになります。なお、クライアントシークレットはハードコードせず、Power Automateの接続設定や環境変数として管理することをおすすめします。
Power AutomateでIntuneのデバイス情報を取得しリストを更新するフロー
準備が整ったら、Power Automateで自動更新フローを作成します。大まかな流れは以下の通りです。
1. トリガーを設定する
「スケジュール済みクラウドフロー」を選択し、実行頻度(例:1日に1回・深夜2時)を設定します。
2. HTTP要求を送信する
「HTTP」コネクタの「HTTP要求を送信します」アクションを追加します。
- 方法:
GET - URI:
https://graph.microsoft.com/v1.0/deviceManagement/managedDevices - 認証:Entra IDで登録したアプリの情報(テナントID・クライアントID・シークレット)を使って認証を設定します。
⚠️ 「HTTP」アクションはPremiumコネクタです。利用にはPower Automateの有料プランが必要になる場合があります(詳細は後述)。
3. JSONの解析を行う
HTTP要求で取得した結果(デバイス情報の一覧)を、後のアクションで扱いやすくするために「JSONの解析」アクションで整形します。
4. 各デバイス情報でループ処理する
「コントロール」の「それぞれに適用(Apply to each)」を追加し、解析したデバイス情報を1件ずつループ処理します。
5. 差分更新ロジックを実装する
ループの中で、以下の処理を組み込みます。
- ① 既存アイテムの検索:「SharePoint」コネクタの「項目の取得」アクションを使い、シリアル番号をキーにしてSharePointリストに同じデバイスが既に登録されているか検索します。
- ② 条件分岐:検索結果の有無で処理を分岐させます。
– 存在する場合:「項目の更新」アクションで最新情報に上書きします。
– 存在しない場合:「項目の作成」アクションで新しいデバイスとしてリストに追加します。
このフローを一度作成して有効にすれば、あとは設定したスケジュールで自動的に台帳が更新され続けます。
関連記事:Power Automateで業務自動化する方法|社内SEがすぐ使える実践フロー5選
自動化における注意点とつまずきやすい箇所
APIの権限設定・ライセンス要件・SharePointリストの仕様変更が、自動化構築時の主な注意点です。
⚠️ よくある落とし穴:APIのアクセス権限不足
Microsoft Graph APIを呼び出すための権限が不足していると、フローは「403 Forbidden」などのエラーで失敗します。準備②で解説した DeviceManagementManagedDevices.Read.All のような適切な権限が、管理者の同意も含めて正しく付与されているかどうかを最初に確認してください。自分の経験上、このエラーに気づくまでに時間を取られるケースが一番多いです。
⚠️ よくある落とし穴:SharePointリストの列名変更
Power Automateのフローを作成した後にSharePointリストの列名を変更すると、フローがどの列に書き込めばよいか分からなくなりエラーが発生します。列名は最初にしっかり設計し、フロー作成後はむやみに変更しないようにしましょう。変更が必要な場合は、フロー側の設定も必ず合わせて修正してください。
⚠️ よくある落とし穴:ライセンス要件の確認不足
この自動化にはいくつかのライセンスが必要です。IntuneのAPIを利用するにはテナントに有効なIntuneライセンスが必要です。また、Power Automateの「HTTP」アクションはPremiumコネクタに該当するため、Microsoft 365ライセンスに含まれる標準機能だけでは足りず、Power Automateの有料プラン(Power Automate Premiumで月額2,248円〜、2026年時点)が必要になる場合があります。構築前に自社のライセンス体系を確認しておくと、後から慌てずに済みます。
実際に使ってみた結果
- かかった時間:初回のフロー構築とテストに約3〜4時間かかりました。特に、Microsoft Graph APIの認証設定とJSONデータの整形まわりで少し時間を要しました。
- 削減できた時間:これまで月に数時間かかっていた棚卸し前の台帳精査や日々の更新作業が、フロー稼働後はほぼゼロになりました。年間で見ると数十時間分の工数削減につながっています。
- 詰まったポイント:IntuneのAPIから返ってくる日付データのフォーマットと、SharePointリストの「日付と時刻」型がうまく噛み合わず、変換処理で少し試行錯誤しました。
- 正直な感想:一度設定してしまえば完全に自動で動いてくれるため、精神的な負担が大幅に減りました。「台帳は常に正しい状態にある」という安心感は、想像以上に大きいです。
結論:社内SEならこう使う
自動更新されるIT資産管理台帳は、ゴールではなくスタート地点です。
- PCの交換時期を自動通知:SharePointリストの購入日を元に、Power Automateで「購入から4年経過したPC」を抽出し、担当者にTeamsで交換準備を促す通知を自動送信する。
- セキュリティインシデントの初動調査:特定ユーザーが利用しているデバイスを、TeamsのコマンドからPower Automate経由でSharePointリストに問い合わせ、即座にデバイス名やシリアル番号を返却するBotを作成する。
- 資産状況の可視化:SharePointリストをデータソースとしてPower BIレポートを作成し、OSバージョンごとの台数や部署ごとのPC保有数をダッシュボードで常に最新の状態で確認できるようにする。
自動化された台帳をハブとして、他の業務改善へと次々に繋げていける点が、この仕組みの最大の強みです。
関連記事:Microsoft Teams自動化|社内SE向けPower Automate・AI連携で業務効率化【実践フロー】
まとめ:IT資産管理台帳の自動更新で管理業務から解放される
今回は、Intune・Power Automate・SharePointリストを連携させたIT資産管理台帳の自動更新方法を解説しました。
- 結論:Excelでの手動管理をやめてSharePointリストに移行することが、自動化の第一歩です。
- 理由:Intuneが収集したデバイス情報を、Power Automateが定期的にSharePointリストへ自動で書き込むことで、リアルタイムで正確な台帳を維持できます。
- 具体例:本記事で紹介した手順に沿ってフローを構築すれば、今日からでも手動更新作業をなくせます。
- 次のアクション:まずはSharePointリストの作成とEntra IDのアプリ登録から着手してみてください。環境さえ整えば、フロー自体の作成は意外とスムーズに進みます。
台帳管理という煩雑な作業から解放されると、より付加価値の高いIT業務に時間を使えるようになります。小さな範囲からでも、自動化に取り組んでみてください。
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